この絵は植物の葉に絵の具をつけて、和紙にスタンプして作っている。
この綺麗な三角形の葉は、イシミカワというツル状に伸びる草で、新潟市内でほとんど見ることが無い。
一度佐渡島で見かけたが、それ以来は見たことがない。
この植物との出会いは、江南区に行ったついで、何か良い葉は無いかと周囲を散策していた時だった。畑の脇の草むらに無秩序に伸び拡がる草の葉の形が三角形で、初めてみる形だった。
葉っぱを採ろうとしたら、葉や茎に棘があり、ちくちく痛いのを我慢しながら、葉っぱを集めた。
家に帰って紙にスタンプすると、良い形が表れた。
図鑑で調べるとイシミカワという植物だと判った。
それ以来ちょっと遠いが、その場所まで採取しに出掛けるようになった。
次の年に取りに出掛けると、畑の脇の草は全て刈り取られていて、みる影もなく悲しかった。
他に生えている所は無いかと、県道をまたいで500メートル程離れた集落の空き家に、勢いよく生えていた。
蔓性の草なので、見た目が悪い。伸び放題にカーブしながら上や横に伸びる。
それに触るとチクチク痛いので、人間にきっと嫌われるだろうなと予想がついた。
さらに周囲を探すと放棄された畑に一面イシミカワが生えていて、嬉しかった。
それからここで葉を採取するようにした。
この草を近所で増やそうと思い、種をとって別の河原に巻いたりしたが、根付かなかった。
持ち帰った葉っぱを水に漬けていたら、葉の根元から根が出たので、植木鉢に植えてベランダで育てた。無秩序に生える姿が妻には不評だったが、引越しの時も新居に持って行った。
それが久しぶりに新潟に帰ったこの間、江南区に行ってみると、畑一面にあったイシミカワが綺麗に無くなっていた。
近くの空き家も取り壊されて、新しい家が建っていた。
我が家のイシミカワは妻が嫌いだったらしく、僕がいない間に無くなっていた。
イシミカワを増やそうと思い、今年の春に、運河の周りにも種を蒔いたので、見に行ったが少しも生えて無かった。
見た目が悪いと人間の都合で刈られてしまう小さな草だ。
生存を脅かされている生物が、他にもあるに違いない。