雨の日の出来事

一昨日から大粒の雨が降り続いている。
新潟のある所では、7月の平均降雨量を超える記録的な大雨になっているらしい。
新潟市内でも小粒から中粒の雨がシャワーのように降り続けている。


昨日実家から根の付いたシソが束で送られて来た。
何束かあったのでご近所に配ったが、まだ余っていたので川の土手に植えようと大雨の中スコップと苗を持って外に出た。
小路の角を曲がると10m程先に道幅5m程の道幅の道路があり、その向こうの緑地帯には緑が生い茂っている。
その道を一台の軽自動車が通り過ぎて行った。
30代位の女性が運転するベージュ色の軽自動車だった。
通り迄出ると雨で視界と車のエンジン音が判りにくく、傘を持ち上げて右と左を見渡した。
ふと左を見ると道路の真ん中で、何かがクルクルと飛び跳ねている。
まるでストリートダンサーが片手で逆立ちをしたり、頭を軸にクルクル回ったりするような激しい動きをしている。
見るとクリーム色の猫で、カニか何かが背中にしがみ付いていて、振りほどこうとしているのか?
と近づいて見ると片目の眼球が飛び出ている。
車に撥ねられたか、轢かれたのだと判る、が何とも助けようがない。
そのうち横たわり、寝返りを打って苦しそうだ。
口から出た血が大雨で洗い流されている。
濡れないように傘をさしてあげる。これくらいしかしてあげられることがない。
通る車が何事かとスピードを落として、こちらを見ながら去って行く。


動かなくなったので緑地にあった大きな植木鉢を持って来て、さらに轢かれないようにと猫の脇に置いて、自宅に段ボールを取に行く。
すぐ近くの猫屋敷から何匹かの猫がこちらを見ている、事の一部始終を眺めていたようだ。
家に帰り段ボールの板を持って戻ると、動かない猫はまだ暖かい。そっと撫でてあげた。
両足を持ち上げ猫を乗せて、緑地の奥の落ち葉の上に置いてあげた。
カラスが頭上で騒いでいたので、土に埋めないでおいた。
シソを植えて家に帰ったがその出来事が中々頭から離れなかった。


翌朝は良く晴れた。
何処からか変わった猫の鳴き声が聞こえて来た。
あの猫を探している声のようだった。