ありがとう白ちゃん

一昨日の朝
猫の白ちゃんが病院で亡くなった。
何日も食事も水も摂らなくなくなり、辛そうだったので病院で点滴を打ってもらう事にした。
もう足が震えて立てない程に弱った彼女をゲージに入れて、か細く鳴いて嫌がるのを車で30分もかけて病院迄連れて行った。
診察時間迄30分あったので、芝生のある木陰で休むことにした。
元々野良猫だった白ちゃんに、久しぶりに土の匂いに触れてもらおうと、ゲージを開けて外に出してあげた。
草の上で眼を細めて伏せていた。
もっと元気なうちに外に出してあげられたらどんなに良かったかと思った。
白ちゃんが切望していた、安らぎのひとときになったと思う。
病院ではすぐに点滴をしてくれるかと願ったが、採血をして1時間程して結果が出てから、腎臓の数値が極度に良くないと言われ、病院で亡くなることもあるという同意書を書いた。
白ちゃんは鳴いて僕らに眼で訴えていたが、先生に抱えられて病室の奥に消えて行った。


少し元気になって帰って来るのか、亡くなったと病院から電話が掛かってくるのか、不安な一晩を過ごした。


朝になって、もうすぐ会えると期待しながら家を出た。
車で病院に向かう途中で病院から電話があり、亡くなったと知らされ、無言で病院に向かった。
もう30分早く家を出ていれば、彼女に会えたかもしれない。白ちゃんも僕らが来るのを待っていたかもしれないと思うとやるせなかった。


覚悟をしていた妻は出来るだけ正常に明るく振る舞って、先生にお礼を伝えて遺体を引き受けた。
死後硬直した亡骸は、とても死んだとは思えないほど暖かかった。


家に着くと妻はよくがんばったねと白ちゃんを抱きかかえ、頬ずりして撫でててあげた。
白ちゃんの娘猫は、なんかおかしいと死んだ白ちゃんの匂いを何度も嗅いで、しまいには遺体に向かってシャーっと威嚇した。
その晩は白ちゃんの思い出話をしながら、泣いて笑って、遺体を近くに置いて一緒に寝た。


次の朝大雨の中、白ちゃんを抱えスコップを持って近くの空き地へ行った。
葉っぱの柔らかい、枝振りの伸びやかな木の下に穴を掘って、白ちゃんを埋葬した。


いろいろなことを教えてくれた白ちゃんに、ただただ感謝です。
ありがとう白ちゃん、どうぞ安らかに。