前回のアシナガバチの話の続きになりますが、アシナガバチの巣のあったすぐ向かいの空家の軒下から、たくさんのスズメバチが出入りしています。
距離にして、3メートルくら位でしょうか。
5メートル先の椿の木のスズメバチと、二つのスズメバチの巣の目と鼻の先程の距離に、うちのアシナガバチの巣があったんです。
これではなかなか共存するのは難しかった事でしょう。
8月11日は新潟市子供創造センターで、新潟絵屋と子供創造センターの共同企画があった。
講師山口達己、「やまちゃんところがしアートをつくってみよう」というお題で、子供対象のワークショップが開催された。
僕自身ワークショプは何回か経験があった。
木の葉のスタンプで、栞を作ったり、幼稚園に呼ばれて木の葉をペタペタして、みんなで絵を作った事もあった。
モビール作りも何度かやった。
それらは材料が用意し易く、破綻なく物が作れる。
あるいは完成が予想し易く、大きな失敗が無いところが良かった。
その分大方決まったやり方で、想像の範囲を超えないところが悪くもあった。
子供創造センターでも一度ワークショップをしたことがある。
水と土の芸術祭関連のイベント企画で、雨に絵を描いてもらう作品を、子供達に体験してもらおう、というものだった。
イベント当日雨が降ってくれないかと念じたが、雨は降らなかった。
そこで僕が用意した霧吹きで霧を吹いて、雨の替わりにした。
水滴に濡れて絵の具が流れる要素は、雨も霧吹きも変わらないものだが、実際に雨に晒すのとは違い今ひとつ感動に欠ける物だった。
きっと講師の先生が、適度に加減をして、僕、あるいはわたし、の描いた絵に水滴を霧吹きで撒いている。
そのことに感動がなかったんだろう。
そんな経験があり、新潟絵屋からワークショップをやって欲しいと声がかかった時、僕が普段から制作している、自然の力を借りて制作する中から、出来る事があるかどうか考えた。
でも実際に海岸まで行って、絵を波に晒しにいくわけにもいかないし、真夏だから雪は無いし、絵を風や雨など、自然条件に任せるのは危険だし、何をすれば良いんだろうと、戸惑った。
少しして、「物を転がして絵を描く」というのが頭に浮かんだ。
以前コンニャクで絵を描いている人が居る。(玉コンニャクに墨をつけて転がす)という話を聞いて、面白いなと思ったことと、僕は絵の具の着いたパネルを雪の斜面に滑らせるというヘンテコな事をやっているのだが、雪で作った球に絵の具を混ぜて、画面上を転がすのもやってみたいと考えていたので、転がして絵を描く発想に至ったんだと思う。
それをやってみたいと話すと、新潟絵屋の担当の方は、面白いと言ってくれた。
このアイデアで行くことに決めた。
ここ迄は楽しいことになりそうだと想像をしている段階だった。
実際にやってみなくてはどんなものか少しもわからないので、やって見る事にした。
まずは転がすものを探しに、海岸に行った。
砂浜に流れ着いた、松ぼっくりや胡桃、シャボン玉のプラスチック容器など。
家に着いてパネルに紙を貼り、早速試してみた。
まずは墨汁を付けて、松ぼっくりを。
松ぼっくりの先端にだけ紙と触れるので、微妙な点々が記された。
期待したものとは違った、何だかわからない小さな点。
しかも10センチも画面上を移動すると、墨が紙に吸い取られてそれ以降は擦れて、綺麗に跡が出ない、更に何だかわからない点になった。
石ころや、胡桃も変わらなかった。
今考えるとわかる事だが、紙と物との接地点が小さくて、素材自体が吸水しない為、素材に墨を保水出来なくて、紙に綺麗な形跡が出なかったんだろう。
シャボン玉の容器は、工業製品の持つ規則正しい凹凸が現れ、期待してない面白さがあった。
少しやってみて、ため息が出た。
この発想を、思いついたまでは良かった。
実際にやってみると、思ったよりも図像が現れないし、一回一回墨をつけて、転がして、また墨をつけてというのは、思ったより地味な作業だった。
物に絵の具を付けて、傾斜のある画面の上方にその物を置き、重力に任せて転がり落ちる。
またそれを繰り返す。
線が少しづつ増えていくが、真っ白な画面を埋め尽くすまでには、この単純な好意を何度繰り返さなければいけないのだろう、こんな事を子供達は楽しんでやるのだろうか?と考えるとため息が出た。
その2日後、子供想像センターで打ち合わせがあり、試しに作った地味な絵を打合わせに持って行った。
続く。