8月11日回想3

8月11日迄は、まだひと月以上ある。

 

6月30日から、古田木綿子さんとの二人展が新潟絵屋で開催された。

会場に居てお客さんと話をする中で、何人かの人が子供想像センターのチラシを見て、「コロコロアートやった事あるよ」とか「子供達とやった」とか、「学校の教科書に載ってるよ」という意見を貰った。

僕としては、自分のオリジナルな発想だと思っていたので、誰かの二番煎じどころではなく、美術の教科書に載るほどポピュラーな制作技法なんだとわかって、がっかりした。

と同時にますますコロコロに対する、やる気がなくなった。

 

二人展が終わり、次の展示の為の作品制作と、カレンダーの制作で忙しくなってきた。

8月11日のことを、子供たちが楽しめるかどうかと僕が心配しても、それは僕の頭の中の妄想で、当日になってみないとわからないことだ。

と考える事にして、コロコロアートの事は意識的に頭の隅に追いやった。

 

そうこうしている間に8月になった。相変わらずコロコロの事はあまり考えなかった。

ただ定員15名分のパネルに紙を水張りする作業があったので、イベントの4日前から水張りを始めた。

3日前くらいに子供創造センターの方から、当日のスケジュールとそれに対する準備がメールで送られてきた。

それを読んで、だんだん当日の具体的なイメージが出来てきた。

以前試しにコロコロやった物を、物置から持ってきて並べてみた。

案外似たような物が多いので、もっと色々な形状と質感の物を探しに、100円均一の店に行って、転がすと面白そうな物を購入した。

スーパーで、山芋と大根を買った。

 

コロコロで出来た色や形は、それら自体が主役になりにくいところがある。

どちらかというと具体的に描かれた物の背景に似合い、模様として、マチエールとして、その技法が用いられる事が多いと思う。

そこで前日の夜から、鳥や花や魚などをモチーフにした形を用意する事にした。

鳥や花などの形に紙を切り抜き、スプレーボンドで接着出来るようにして、画面にマスキング(目隠し)をする。

その上にコロコロをする。マスキングした所に絵の具は乗らない為、そのマスキングを剥がせば鳥なり蝶なりの姿が浮かび上がる、という仕掛けだ。

ただ口で言ってもわかりにくいので、参考になる作品も作っていたら当日ギリギリ出発の時間になった。

 

8月11日、連日暑い日が続いていた、この日もまあまあ暑い日だった。

13時30分開始の2時間前に子供創造センターに着いた。

打ち合わせをしながら、子供創造センターの方と、新潟絵屋から手伝いに来てくれた方々と準備をしていく。あーだこーだイベントの流れを話し合いながら、机を準備したり、持ってきた作品や絵を並べたりした。

お昼を食べて、絵の具をちょうど良い硬さに水で溶いて、などしているうちに13時20分になりお客さんが会場に入ってきたけど、まだバタバタしていた。

 

残りの作業は他の方がやってくれる事になり、創造センターの方、新潟絵屋の方、僕の順番で挨拶をした。

このイベントのチラシのタイトルが「やまちゃんところがしアートをつくってみよう」だったので、初めの挨拶を「山ちゃんでーす」と入るところを、いつも通り「山口達己と申します」と言ってしまった。

 

司会は新潟絵屋の方がやってくれてとても助かった。

「みんなが持ってきた物を並べて見せて下さい」という掛け声で、みんなが物を持ってきてくれた物を並べて見せてくれた。

複雑な形をしたおもちゃの球体やら、フラフープの小さいような物や、何に使うのかわからない規則正しい穴の開いた金属の円柱やら、ホールトマトの缶詰だろうか大きな缶詰を持って来た子供もいた。

 

最初は子供創造センターの方が用意してくれた、3メートル×3メートルの正方形の大きな紙を床に敷いて、その上を絵の具の付いた物を転がして、反対側にいる人へパスをするという行為。

 

赤い色、黄色、青の好きな色の辺に並んで順番に、好きな物に色を付けて転がしていった。

転がってきたのを受け取った子は、またそれに違う色の絵の具を付けて、パスをくれた人に転がして、球を返した。

色々な色、形の跡が、真っ白だった画面にどんどん増えていった。

最初順番にやっていたが、そろそろ自由にやりましょうということで、みんな思い思いに物に色を付けて転がした。

子供も楽しそうだったが、父兄の方も参加していて楽しそうだった。

僕は何もいう事がなかった、みんなが楽しそうで眺めているだけで、僕も嬉しくなった。

 

次に自分の席に着いて、自分のパネル上でそれぞれが好きなものを転がした。

前日用意したマスキングの鳥や花が役に立った。

用意したパネルの裏と表の両面にコロコロして、制作時間終了間際まで熱中する子もいた。

 

制作が終了し、多分、みんな満足気に帰って行った。

 

子供創造センターと絵屋の方達に、この企画は面白いのか不安だと、愚痴を言った事を謝った。みなさんのお膳立てがなかったら、上手く事が進まなかったと感謝の気持ちを伝えた。

 

制作を楽しむこと、怖がらずにやってみることなど、子供達から教わった。

 

みんなで描いたコロコロの絵(部分)

 

今回みんなでやったコロコロの作品は、8月31日迄新潟市子供創造センターの3階に展示してあります。

タテヨコ3メートルある大きな画面です。

興味のある方はどうぞご覧ください。