今年の夏

今日はずいぶんと涼しい。
そこで今年の夏を振り返る。

先月の初めにある方から、「写真展を開くので猫の写真をたくさん撮って欲しい。」
との依頼が突然入り、猫を探しにいろいろな所を出歩く。
そんな中自宅から自転車で十五分の所に、昭和の名残の残る公団住宅があり、その近辺をうろつくと多くの猫に出会う。
アパートの前には小さな庭があり、緑も多い。猫にとっても暮らし易い環境なのだろう。
通ううちに多くの家の様子が何だかおかしい。大掃除をする家が多いのである、
住人に聞いてみると、七月一杯で壊されてしまうそうで、みなさん引っ越しの準備をしているのだそうだ。

そんな事も知らずに、猫は暮らしていた。
ぼくも只写真を撮らせてもらうのも悪いと思い、キャットフードを持ち歩き出会った猫にやるようにして、それが習慣化されていった。
住人の引っ越しと共にガラント廃墟と化した周りの変化に、猫達も少し戸惑っていたに違いない。
ある日無人のアパートの前にうずくまって動かない一匹の子猫が居る、きっと前の主が餌をくれるのを待っているのではないだろうか?目には目脂がひどく咳をしたりとひどく衰弱した様子。
近寄って餌をやろうとすると、小さいのに「フーッ」と言って威嚇をするが、餌の存在に気付き慌ててがつきだす。
余程腹が減っていたのだろう、すごい勢いで食べ尽くす。
匂いを嗅ぎ付けたのか、どこからともなく二三匹の青年猫がやって来たのでそいつらにも与える。

あれから、一月あまり毎日出かけて行っては、餌をやっている。
そのうち、チビはすこぶる元気になり、ぼくが行くと足に絡み付いて喜ぶ。
ちょっと遠いのだが、よっこいしょと今日も出かける。