伊豆の思いで3

働きはじめた当初は、お客さんとの距離がわからず、おっかなびっくりで常に緊張していたと思う。
日が経つにつれだんだん慣れて来て、少し周りが見えるようになった。
平日になると少し暇な時もあり、そんな時には掃除をした。
よく見ると食べ物や芝生なんかが床に落ちていて汚かった。
この短い滞在期間にこのホテルで何か貢献出来る事をしようと考えていたので、自分は掃除を全力でやる事に決めた。
レストランホールは広く丁寧に掃除すると1時間では終わらず、次の日続きをしたりした。
兎に角小さなゴミも気にならないところまで確認して掃除した。
これで暫くは掃除しなくてもいいと思っていたが、そうはいかなかった。


ホテルは中国からの団体客が多かった。
毎週のように来て、多い時には週に2、3回来ていた。
彼らが来ると食べ散らかして汚いんだと、同僚から噂を聞いていた。
実際にサービスしてみると、確かに汚かった。
カニスープのカニの殻をお皿の上では無く、テーブルクロスの上に直に山盛りにしていた。
それが床のカーペットの上に落ちたり、ご飯が散らかっていたりして確かに汚かった。
人の良さそうなおじいさんがニコニコしながら食べていた。
美味しそうに食べてくれてるなと思っていると、帰ってからテーブルの上が大変な事になっていたりした。
みんながみんなそうではない。
丁寧な人もいる。
帰る時に、サンキューだったり、シェイシェイと声を掛けてくれた。
中国と日本と習慣が違うもので、悪気がある訳ではなさそうだ。
しかしこれほど迄に汚いと、一度自分のテーブルと床を掃除して帰って欲しいと思ったりもした。


宴が終わると床に散らかっていたりしたのを目立つ所だけ掃除して、タイムカードを押し。
朝は朝でまたその人達がやってきて、バイキングで散らかし、昼になり忙しく働いた。
結局掃除をする時間も無いし、掃除をしても汚れる状況に、みんな慣れっこになっているようだった。
そんななか、出来るだけきれいにしようとがんばった。