良い出会い

サービスの仕事もたまに、うれしい事がある。


一昨々日の夜、海外からの二人組のお客がいらした。
男性は白人で、料理を持って行くたびに、「サンキュー」と言って自然な笑顔が表れる。
女性はアジア系のお客さん。
お二人にサンキューと言われる度に、ぼくは「はい」と受け答えをする。
ぼくとお客さんと、何か特別会話をしたかは覚えていない。
いい感じの人達だなあ、と爽やかに良い印象は残っていた。


昨日の朝バイキングで片付けやら、ご案内やらで忙しい時、ふとお客さんに「ハーイ」と呼び止められる。
見ると一昨日のカップルで、ニコニコ手を振ってくれる。
ぼくも嬉しくて、手を振る。
嬉しいなあと思いつつも、英会話が出来ないので、そのまま、またサービスに戻った。


朝食も終わり頃お客が少なくなり、テーブルを吹いていると、さっきのカップルがなにやら話しかけて来た。
よくわからないが、ぼくは自分なりに理解した。
「今日ホテルを去るんだ。」「滞在中ありがとう。」
何て言ったかは、単語の一つも覚えて無いが、多分こんな事だと思う。
ぼくは「have a nice trip」と答えて、お互いに笑顔で手を振って別れた。
会話が出来ないけど、心が通じるうれしい出来事だった。


ひと月前程には、一人の女性に何度も「水を下さい」と言われた。
手が回らない程忙しかったが、ニコニコしてそう言われるので、その度に丁寧に水を持って行った。
終わり際に水のお話と、そこから派生して愛知県生まれだ、などと軽い会話をした。
後日マネージャーから、山口さんのサービスが親切だったという内容のコメントのアンケート用紙を見せられた。


こういった出会いは不思議なことで、こちらがいくら丁寧にサービスしても、通じない(お互いに響かない)ことはよくある。
以前ポルトガルに旅に出た時、ある田舎町で一匹の犬に好かれて、ずっと着いて来られた事がある。
木陰で腰を下ろし、昼のパンを分けてあげたりした。
それがいつまでも着いて来るので困り、高い城壁に登って、追って来れないようにしてホテル迄帰った。
夕方になり街の広場に行くと、昼のあの犬がしっぽを降り降り走って来て飛びつかれ、大喜びで顔を舐め回してきた。
その場に犬の飼い主が居て、それを見て驚いて、「oh スノーピー」と犬を呼んでいた。


犬の話は脱線したが、サービス側の心と、受け手側の心が通じることがたまにあり、別れ際に良い風がふく。
河口湖でのサービスも残すところあと10日になった。
良い出会いがあるといいな。