なつかし

学生時代、研究室の研修旅行で北越製紙の長岡工場を訪れた事があった。合宿所みたいな広間で、その時に製紙会社の管理する山で採れたてのきのこ鍋を囲んでの、もてなしと美味しい日本酒、それと新潟の方達の暖かい心使いが印象にあった。

それを機会に飲んだ席で、大きな紙が欲しいとお願いしたら、高さ二メートル巻きが20メートルもある紙を大学迄届けてくれた事があった。

その紙は水彩紙にしては少し特徴があった。
それはパルプのままのような紙質で弱く、吸水性が驚く程良いもので、インクで絵を描いてもすぐに紙の中迄染み込んでしまい、雨に打たせてもインクで描いた模様がそんなにも変化しない、といった物で、以前はそんなに重宝しなかったのだが、最近またその紙を使う事が増えて来た。

それでその紙も、いくら大量にあったとはいえ、15年もすれば無くなるもので、代わりになる紙を大きな画材屋で探していたのだが、なかなか見つからないので困ってしまい、以前お世話になった北越製紙さんに電話をして、コンタクトを取って今日お伺いをして来た。
あんなにも昔に、ほんの1、2日のつきあいだのに、昔とまるで変わらないご様子で、懐かしかった。

その紙は以前は造っていたのが、最近は需要に変化が出て今は製造していないので、あるかどうかわからないという事だった。
あってくれるといいのだが。




生時代に経験させて頂いた数少ない経験が、今に繋がっているんだと思った。


上は紙質の固い紙に描いたもので、下が今回欲する紙で描いた物です。